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味わいのある表現


古典落語や時代小説には、
面白い言い回しがいろいろと出てきます。
忘れないうちに、その場でメモ書き。
かなりの量が集まりました。



たとえば【思案投げ首】。
柔道の技ではありません。
考え込んで何度も首をかしげる様子のこと。
かなり悩んでいる雰囲気です。



【小家から火を出す】は、
小さな家ほど火事が起こりやすいと諭しています。
つまり、小さいからこそ、
油断なくしっかり対応せよということでしょう。



メモ書きを眺めていて、ふと気付きました。
古い文章中には刃物に関する表現が多いのです。
たとえば【匕首に鍔】とか。
【猫に小判】と似たような使い方をします。



【切羽つまる】は身動きできない万事休すの状態。
刀のある部分に由来しています。
【め抜き通り】はメインストリートのことですが、
刀には、め抜きという箇所があります。



【反りがあわない】【元のさやにもどる】
【刃がたたない】【太刀打ちできない】
【ヤキをいれる】【しのぎを削る】
書き出してみるとけっこうあります。



間に合わせで切り抜ける【急場しのぎ】も、
もとは【急刃しのぎ】と書きました。
同じ意味で【付け焼刃】があります。
今の時代、こうした慣用句はあまり使われないようです。



佐伯泰英さん「吉原裏同心シリーズ」

第3巻 見番
第4巻 清掻
第5巻 初花
第6巻 遣手



~豊後岡藩を逐電、全国を流浪したのち、
江戸の吉原に流れ着いた、神守幹次郎と汀女。
吉原会所の計らいによって仕事と住まいを得た。



幹次郎は吉原で起こった事件や騒動に対し、
密かに探り、解決することを任されていた。
それは剣槍の戦いに身を晒す、命がけの仕事であった。



汀女は遊女衆のための手習い塾で師匠を務めていた。
遊女たちの教養を高める一方で、
不穏な空気を先読みする耳目の役目も担っていた。



新興勢力の台頭、引ったくりや掏りの横行、
遊郭の利権を狙う幕府官僚。
吉原に忍び寄る悪の影を今宵も幹次郎が両断した。~


裏方として吉原の治安を守る、幹次郎さん。
活動するのは、主に夜間。
しーんと寝静まった町の描写が、
【屋根の棟も三寸下がる】。



【やのむねもさんすんさがる】と読み、
【草木も眠る丑三つ時】と一緒に使ったりします。
家屋も沈むように眠り込んでいる様子が伝わる、
味わいのある表現に感じ入ります。

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Calender