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辞典のいろいろな使い方

 

いつものように駄文を書いていた時のこと。
プライドを意味する言葉の熟語がどうしても思い出せず。
衿(えり)みたいなカタチがぼんやり浮かぶだけ。
とりあえずネット検索してみることに。

 

プライドを調べると、誇り、自尊心、自負心。
自尊心の類語を検索すると、プライド、矜持(きょうじ)。
ありました。矜持。探していたのはこれ。
便利なネット辞典。細かい文字も拡大できるし。

 

本棚にあったコンパクト国語辞典の場合。
プライドの項には、誇り、自尊心とあります。
誇りのページを見ると、誇ること、自慢、プライド、と。
ここで行き止まりになってしまいます。

 

一方、広辞苑をめくってみると、
プライドには、誇り、自尊心、自負心、矜持の記載が。
さすがは広辞苑机上版さま。
余談ですが、プライドの次はフライド・チキンの説明でした。

 

言葉の意味を調べたい時、国語辞典はとても役立ちます。
一文字でも判っていれば、漢和辞典も使えます。
しかし、言葉の意味から言葉本体を捜したい場合は、
ネット辞典が手っ取り早いように思えます。

 

それでも、紙の辞典は手放せません。
ネット系にはない楽しみや使い方があります。
たとえば、矜持を調べたついでにその周りを眺めてみると、
嬌姿(あでやかな)、驕恣(おごって気まま)など珍しい言葉に出会えたり。

 

 

三浦しをんさん「舟を編む」

 

~大手出版社の営業部で浮きまくっていた入社3年目の馬締光也(まじめみつや)。
大学院で言語学を専攻した実績と、言葉に対する鋭い感覚、愚直なほどの律儀さ、
備品棚をきっちり片付けるレイアウト能力を買われ、辞書編集部にスカウトされた。

 

辞書編集部では新しい国語辞典「大渡海」を編纂する企画が進行中だった。
メンバーは、正社員の西岡と馬締、契約社員の佐々木、学者の松本先生。
馬締をスカウトしてきた荒木は定年退職し、嘱託としての参加である。

 

そんな中、堅物と思われていた馬締が一目ぼれ。
相手は下宿の大家さんの孫で、修業中の見習い板前・林香具矢。
馬締は意を決して便箋15枚に及ぶ恋文を書き、香具矢に手渡したのだが。~

 


ラブコメっぽい前半に対して、後半はお仕事ストーリー全開です。
文楽の世界を描いた「仏果を得ず」もそうでしたが、
三浦さんは一般的ではない業界にスポットを当てるのがお得意のようで、
今回は辞書編集の裏事情が満載です。

 

たとえば、辞典紙のエピソード。薄く、軽く、裏写りしない紙質は当然として、
馬締さんが訴えるのは『ぬめり感』。
指に吸い付くような湿感で、さらに複数の紙がひっつかないことだとか。
で、そういう理想の紙を製紙会社さんと一緒に開発するのです。

 

あるいは、読者(辞典愛好者)からの問い合わせ。
物語では「へのひと」と呼ばれる、こだわりさんが登場します。
私も助詞の「へ」については、ある疑問を抱いているので、
今度、辞書編集部さんにお尋ねしてみたいと思います。

 


ところで、ウチの職場では印刷冊子の見本を作成することがあります。
ノリ付け面を密着させシワを伸ばすため、仕上げに使うのが辞典。
広辞苑と新英和大辞典を一緒に重ねて、ギュギュ~っと。
分厚い辞典は重石としてとても役立つのです。


 

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